色のない緑

ゲーム、アニメ、本の感想など書きます。主にTwitterの補完的な記事です。

【ネタバレあり】『パラサイト 半地下の家族』を観た

先日、アカデミー賞を取った『パラサイト 半地下の家族』を観て来ました。
アカデミー賞を取ったという前情報しか得ていない情報で劇場に足を運びました。
ネタバレしかないです。


風刺とコメディのバランス

作品全体を通して、風刺が非常に強く、格差社会や核問題といった現代社会の闇を表現してされていました。ブラック・コメディ作品として割り切って観れば、パク家の大豪邸で我が家のように振る舞い、パク夫人らが帰宅した途端に物陰に隠れるキム家4人の様子は、まるで寄生虫そのもので大変痛快でした。
ムングァンの朝鮮中央放送アナウンサーのモノマネは巧すぎて、思わず声を上げて笑ってしまいました。
ブラック・コメディの後に訪れる猟奇的なシーンは、温度差ありすぎて鳥肌が立ちました。全体的に中だるみすることない構成で2時間12分はあっという間で、役者の演技力も相まって映画作品としてのレベルの高さを感じました。

快楽に溺れる女

本作品で1番好きなシーンはここです。

仕事が終わらない時に吸うタバコ、テスト前日にするゲーム、私自身同じような経験に心当たりがありすぎて、規模の大きさは違えど、「自分に不幸やストレスが降りかかっている状況で快楽という甘美な現実逃避に走る」ギジョンの姿は非常に共感できました。

また、同じ快楽に溺れる女といえば、性行為のシーン。
近くに息子がいる状況でありながら、ヨンギョが夫から愛撫されて快楽に身を委ねている姿は下手なAVより背徳感があって興奮しました。 ヨンギョ役を演じるチョ・ヨジョンは、大好きな深津絵里さんに似ていて、この濡れ場のシーンは性癖にぶっ刺さりました。俺も乳首を時計回りで愛撫したい

凶行に踏み出す一線

本作品も『ジョーカー』と同じような惹き込まれ方をしました。日頃の生活で抱える不満がやがて狂気に変わり、凶行となって表現される。ネガティブで猟奇的な過程から目が離せないのは、文字通り「他人の不幸は蜜の味」といったところでしょうか。その凶行の刃の矛先がどこに向けられるのか、凶行という花火がどのような爆発をするのか気になる、このような興味は野次馬根性に近いものを感じました。

本作品を観終わって数日たった今、マイケル・サンデルの著書『これからの「正義」の話をしよう』に出てくる「功利主義」を思い出しました。行動によって得られる快楽と罰を天秤にかけて、快楽の割合が罰より大きくなるように行動することです。

人の行動にはやってはいけないことがあり、それを罪といい、罪によって被るデメリットを一般的に罰と呼んでいます。人が罪を犯す一線というのは、行動によるメリットとデメリットを天秤にかけることだと思います。本作のギテクやグンセがストーリー終盤で人を刺してしまったのは、デメリットがない――罰によって失うものは何もない、ネットスラングで言う「無敵の人」――状態が作り出した凶行だと感じました。

本作品のような悲劇が現実に起こることがないように願うばかりだと思います。